ますだいっこうのあと@ベルリン

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アリアス・カンパニー『他人の匂い』

横浜ダンスコレクション2002/バニョレ国際振付賞受賞者ダンス公演/アリアス・カンパニー『他人の匂い』@横浜ランドマーク・ホールを観る。

ブラジル出身、スイスで活躍するギレーム・ボテロの振付。すげぇくヘンな人がいちいち登場するダンスで、よかったー。レストランが舞台の前半。いろんなお客が登場して、芝居っぽい。グネングネンな踊りもあり。振りは好き。けど、構成が散発的でだんだん退屈になってきた。

それが、後半になるとゾワゾワっとおもしろくなってきてね。オフィスが舞台で横一列にデスクが並んでいる。前半でも色キチ状態でグネングネン踊ってた女性ダンサーはタイピスト。受話器を取りそれを肩ではさみながら応対を続け、なぜだか「あー、暑いわー」って気分で全裸になっちゃうし。たわわな胸をさらして身をのけ反らしてタイプしてるのよ。あ、タイプライターはないんだけどね。いや彼女は強烈だったな。

あとね、オフィスで働く人々がひとつのデスクに集まって、神妙そうに白い書類を渡しあう謎めいたシーンだとか。チラシの写真にあって「マジでこれやんのい?」的な、キャスター付きイスに男性ダンサー2人で平行に乗るデュエットとか、ガハガハよ。かと思えば、服を脱いで怒鳴りだす、やや上司っぽい風情の男性ダンサー。くっきり胸筋腹筋に、オオオ!

風采のあがらない窓際族な黒縁眼鏡の男性が、なんだかストレスたまっちゃうと、オフィスに強風が吹き抜けちゃう。それが中盤の盛り上がり。もちろん、これ振りでやるんだよ。いきなりイスから、ガン!キャ〜って横倒しになって、デスクの足に必死でつかまったりとかしてるの。これも振りでだよ。もう、バカじゃないのぉ〜、ってあたりが猛烈に拍手だったな。風が収まっても影響でフラフラしてる女性を介抱するデュエットがスルスルと続いたり。ひゃー、この人たち、ネジがトチ狂ってるわ。パンフにあった「…この僅かなずれにより、現実は、よく見慣れていながらにして尋常でないものへと豹変するのだ。」そう、そんなイメージ。

ラストもね、なかなかいいんだ。その黒縁眼鏡社員が、またなんだか虚しい状態になって書類をちぎって撒くと、『ブラジル』に乗って白い紙が降ってくる。果てしなく。このため用の、おそらくはロール紙を一定の長さでカットして排出するマシンがバトンに仕込んであって、鮮やかに白紙が舞う。すごいステキ。ややクサい演出かもしれないけど、カワイイ。音楽が“モロ”なせいもあるけど、映画『未来世紀ブラジル』を思い出しちゃった。

つうわけで、いやー、おもろかったな。それにしてもバニョレで受賞するダンス作品って、どんどん演劇的になってきてるらしいんだよね。レストランの客として、オフィス・ワーカーとしての“芝居”もしつつ、踊り出すんだもん、ダンサーの彼彼女ら。すごいや。

偶然一緒になった、ラビさん・のぶちゃんらとキリン・ザ・ビア・ホール@ドッグヤードガーデンで呑む。楽しくダンスを観て久し振りで一緒に呑めて、ニコニコ楽しかった。バス・ペール・エールをグイグイ。
2002年01月27日(日)