ますだいっこうのあと@ベルリン

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Mirko Borschat『The Inbetween Speech』[ベルリン2015]

ikkomasuda2015-11-22

このところのド曇天時折冷雨の雨音が午後には顆粒音になり屋根裏部屋から覗けばうっすら雪化粧初のそれで気をよくして出かけゲーリッツァーバーンホフ駅下車すれば横殴りの吹雪で笑っちゃう、そんな。ベタニエンでのサウンド企画ECHOS+NETZEクィアアート文脈もあるらしいのだがベルリンあるあるな込み入ったプログラムで部外者的に情報捉まえきれず状態、別展示『Regarding Spectatorship: Revolt and Distant Observer』ざらりと。マキシム・ゴーリキー・テアターへ移動。「2. Berliner Herbstsalon」のアート展示未見分をまず、シャンデリア輝き天井にお偉いさん肖像描かれた豪奢広間の難民情報が縷々集められたアーカイブは圧巻。
Mirko Borschatによるパフォーマンス『The Inbetween Speech』〈ゴーリキ劇場のM Borschat作品も無料で大当たり。テレビ据えた居間的小空間での難民イラン人と失業ドイツ若者との噛み合わない関係の2時間。低体温演技+音映像に、両者リアル犬連れって演出にグッときた。特に独くん犬のアシメぷりが!〉ブラウン管テレビを前に、パフォーマーらしき男性2人それぞれ犬とともに無表情に小卓を囲む、映像が重なったり交錯したり観客にも一部映ったりする無造作な空間、観客も不揃いな椅子に座る。しばらくは、というか“劇中”もずっと映像は流れ続け、どうやら二人の立場の背景をいわばランダムに映し出す、ネオナチの暴動・イラン革命・かたやの登場人物の家族や画家だった祖父の作品・インタビュー・ソファに横たわってずっとテレビを見続ける中年女性等々、やがて一人が犬連れで部屋を去り、残った一人、非ヨーロッパ系出自と推測できる容貌の、が訥々と緩く独り言のように、片言ドイツ語英語とたぶん母語で。イラン出身の彼は一人で逃れてきて仕事も友達もない、プードルっぽい犬のジョジョが唯一だ、と音楽と合わせて踊ってみたり、やがてもう一人のドイツ人っぽい男性が戻ってくるも、イラン人の彼が挨拶しても相手は無視で入れ違いに出て行く、部屋に残るは長身ドイツ人のみ。インタビュー映像がテレビに映るが、喋りがえらく訛ってて頭悪いっぽい。ヘビメタ音楽映像に合わせ発散的粗暴な身動き、ビール常飲でちょっとおっかない。そのうち、イラン人が戻ってくるも、ディス・コミュニケーション、散発的な言葉、名前は?出身は?家族は?仕事は?なぜドイツに?レベルの。ここでは仕事がないイラン人に対してドイツ人は繰り返し「Schmartozer」とか相手に言う、「居候・寄食者・寄生虫」の意味だ。でもじきに彼自身が失業者であることを明かし、謎めいていたテレビ見続け女性は彼の母親であると告げる。「成功すれば」的な平行線問答とそれ的な歌詞のようなパンクめいた音楽と、伏線的に進行していた、よくわからんけど田舎の消防団だかの何かの記念だか謝恩だかで素人ブラスバンドが迎えるシーンとそのブースカいう映像音楽から、その場にいる犬二匹が夜道を散歩する映像へ雪崩れ込み、二人はそれとなく仲良くなって一緒にスマホで記念撮影→一番近くにいた僕が撮ったんだけど、するという展開。いわゆる《演劇的》な例えば対人関係の具体心理描写とかがほぼない素っ気なさや断片さ、ドイツ人青年がいわゆる俳優じゃない、ってあたりそれぞれがいわば逆に効果的だったし、どちらかといえば移民を差別排斥する側をいち個人として対置するというのも僕はこれまで視たことがなかったし、二人が気持を通わせる要素としてぶっちゃけ狡いほどの可愛さでいつも脇にいるワンちゃんたちの、表情がいちいち和ませてくれて、これまたすんごく体温あがる場に立合うことができてとてもホクホク気分の夜道。
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