ますだいっこうのあと@ベルリン

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マルターラー演出『Glaube Liebe Hoffnung』

ikkomasuda2012-12-29

昼過ぎに出かけてああ街が賑わってるわねぇわねぇわねぇって今日は土曜で明日は日曜じゃないのさっとやっと気づく鈍さ。けど気づいた矢先にいわゆる100均のユーロショップ発見。明日の4分33秒フラッシュモブの楽器代りに自転車のパフパフ式ホーンを買う。カイザーで食料調達し振り出しに戻る。
Bornholmer Strasse駅界隈へ歩く。駅上の跨線橋が壁崩壊の突破口になったボルンホルマー通りのチェックポイントがあった場所で、写真&解説パネルが建っていた。フリードリヒシュトラッセまで出てドスマン立ち読み。Nollendorf Platzへ移動、NKさんと待ち合わせ@カフェREZAツイッター経由で知り合ったベルリン在住女性。震災・原発事故以来のあれこれから、LGBT話ドイツ語学習アート諸々2時間喋り倒す。ポジティブなスタンスが素敵な方でしたー。
『Glaube Liebe Hoffnung』@フォルクスビューネ。〈マルターラーの今年の作品『Glaube Liebe Hoffnung』四分の一泣きな観後感。中高年男性&若い女性の恋愛話込みな人間描写が、平均年齢高め俳優らにより、控えめな歌声・ピアノ弾き語り・スピーカー楽団とともに体温をじわりじわり上げる3時間。贅沢な2012年見納めに感謝!〉。
調べてみたら、戯曲は1932年にエデン・V・ホルヴァートによって書かれたもので、日本語訳も出てた。解剖学研究所に身を売りにきたうら若きエリザベートが警官と恋に落ちるも果たせず入水自殺する、がざっくり過ぎるストーリー。プログラムの役名には標本者、検査官、傷病兵もあり、中盤以降から、女性の模型らしきが正面の箱状内のレース越しに現れてたあたりで、なるほど。
舞台美術は僕の目には映画館にもみえる建物のエントランス。室内シーンは下手奥からパネルを動かして来て仕切る。どちらも背が高い装置。オーケストラピットには、さまざまな種類のイスとさまざまな種類のスピーカーが乗った“楽団”と、下手にアップライトピアノ。冒頭看板職人が、切り文字をひさしの上に設置しにくる。「INST」だけだったのに「ANATOM」あたりまで付け加えるがすんごく中途な仕事ぶり。木製梯子がまず一段だけ、次に二段まとめて壊れる“間”ですでに惹き付けられた。次にオーケストラピットへピアニスト・指揮者が登場、スピーカーオーケーストラを指揮、その後ピアノを弾いたり歌ったりするほかは、気難しい顔で座ってる。彼のいちいちがまたたまらん風味で物語のいい味添えになっているのでした。続けて登場人物がまとめて客席扉から現れて、まず低く静かに歌う。装いがみな一昔前のヨーロッパな雰囲気、それはまあ原作に則ってたわけね。その後わりと明瞭な台詞で物語がゆるゆると進んでいく。一人若者以外はピアニスト含むおじさん俳優たちみんなが、枯れた味わい深さたっぷりで、微妙な間合いまで憎いのなんの。たぶん『巨大なるブッツバッハ村』と同じ豊満系女優も小憎らしいキャラで登場、ラブリー。全体的には、照明がうっすら琥珀色になったり、ゆるやかに上手からの明るい光に照らされたりする絶妙な絵面や、“星よりひそかに雨よりやさしく”での斉唱シーン何度かが、題名ひっぱられもあるかもだけど、本当に美しくて神々しくて、うっかり半泣きならぬ四分の一泣きだったのでした。