ますだいっこうのあと@ベルリン

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ポリレアリステン『HappyEndings』千秋楽[ベルリン2015]

寄せ書きノートは、あらかじめ手紙書いてそれを貼っつける作戦にして、で6人分考えて書いて直してなどしてるうちに走馬灯状態で〈こんなに感傷的な気持で迎える楽日は最初で最後だろうな〉って具合に。ちなみに貼る作業は開演までに完遂できず何人かは渡された後こっそり追加するという不格好に。今日も17時30分集合で業務連絡系わりと喋ってフィードバック少なめで、ゆったりめ準備時間、楽日でもやっぱり台詞が不安不安定で空舞台で繰り返すなど、ウォーミングアップしわりと平常運転でスタンバイ。「ポリレアリステン Die Polyrealisten – offen fuer alle Altersgruppen」『HappyEndings』千秋楽@シャウビューネ・スタジオ。相手役ザンドラがわりかし違う芝居してるのが愉快になってたりとかはナイショw。劇中ソロ直後は客席に関係者がいたせいかもしらんが拍手をいただく。終演後稽古場に再集合乾杯&ノート渡しの儀wして、あとはスタジオのバーで打ち上げ的流れ。擦り傷で軽く出血してたせいもあって正直ゼロ社交モードだったものの、ネスリンとちょい喋りぃの記念集合写真撮りぃのベッティーナの夢実現プロジェクトでの歌唱をゾフィのギター伴奏で皆して聴きぃのトゥン&Co.で『I Really Like You』踊りぃの数人でクラブ的に踊りぃのヴィプケに心底お礼&話し込みぃのザンドラ彼氏さん←初日に続き駆けつけたものの入れなかったそう、と社交しぃのトイレでシュテファンと話し込みぃの、本館カフェへ移動してフレデリックと差し話しぃの『第三世代』を観に来てた萩原さんタツヤさんと遭遇し日本語立ち話しぃのその途中で気づいたロメオ・カステルッチには声かけ損ないぃのそんなこんなで別れのハグしまくりぃので24時頃駅へ向かった。
芝居はざっくり書くと、演劇グループの中からスタートアップ会社の案が出て、ドリーマー・コーチ・会社運営メンバーに分かれて活動してみるが…といった粗筋のコラージュ作品でした。ドリーマーの夢実現をコーチが支え、その過程をネット公開することで資金を得ることを目指したという設定。最終的にはドリーマー6人の一人で、説明台詞はカットになったものの「福島事故の記憶を風化させないためにイェリネク『光のない。』をパフォーマンスする」夢で参加という役どころでした。年頭に実際台詞と取り組んだ際、手厚く助けてくれたザンドラが役上でも僕のコーチ担当で、練習シーンが短く挟まれ、なぜよりによってドイツ語話者にとっても難解なイェリネクなのか問われ、原発事故対応についてブチ切れる独語台詞が日本語台詞になるシーンを経て(ちなみに日本語で激怒は作品作り以前のリハで課題としてやりました、その矛先は2020年東京五輪でした。原発がらみの話はデモで一緒になったドラマトルゥク・ジュリアと歩きながらひとりきりしてそれがきっと役の設定に活かされたんだと思ってます)、作品最後に『光のない。』抜粋を劇中ソロとしてパフォーマンスしました。何度もジュリアに個人練習してもらい、部分ごとのちょっとした動きや言い方なども大筋は彼女に整理してもらってから自己アレンジし、最終的には演出ヴィプケと調整しました。台上から飛び降りる動きがあって、終演後観客から「あれビックリ、すごい」等と何人かから言われありがたかったのですが、僕にとっては“ドイツ語で台詞を言う”ことのほうが遥かにしんどくて千秋楽まで心臓が押しつぶされそうでした。しかもその劇中ソロは、演出がゲネプロ前日に変更され、僕以外の出演者が客席脇に回り、観客とともに僕のパフォーマンスを、つまりは夢が実現した例として観る、ということになり、もう目ん玉飛び出そうでした。ああでもその結果、ただお客さんをだけじゃなく、この10ヵ月ほど一緒でいろんな面で支えてくれたメンバーをも舐めるように見つめ、彼らの注目・凝視を全身でありがたく受け止めて「Die Toten strahlen(死者たちは光-線を放つ)」を言うことができて、そんなアングラなw瞬間は一生忘れることができないでしょう。ドイツ語でのコミュケーションが不充分な、ただドイツ語で芝居がやりたいというもはや妄想で紛れ込んだ、演劇教育プロジェクトでしたが、そんな五十路ババアを最後まで助けてくれた、共演者であるポリレアリステンのみんなをはじめ、ヴィプケはじめとする演出チームや、衣装アリアナなど関係各位、そしてベルリンでの生き延びを近くから遠くから応援してくれた諸々の皆さん、ありがとうございました心底。
※劇中ソロの台詞「He, ich hoer deine Stimme kaum, kannst du da nicht was machen? Kannst du sie nicht lauter toenen lassen? Ich moechte mich selbst nicht hoeren, du musst mich irgendwie uebertoenen. Niemand wollte hoeren, jetzt muessen sie. Das Fremde in der Wiege, das da zu fauchen begonnen hat wie das Hoellenfeuer, noch so klein. Dieses neu entstehende Fremde muss vertrieben werden. Wie kriegen wir das ins Meer und dann aus dem Meer wieder heraus? Rein, raus, rein, raus. Wie sollte ein Ausstieg je moeglich sein? Das ist ein Hohlweg, aus dem nichts herausfuehrt, die Waende sind meterhoch, steil und glatt. Wir hoffen wohl, dass das ein gutes Licht auch auf uns wirft. Aber Licht, Strahlen, Waerme kann man nicht hoeren. Was ist das fuer ein Fauchen? Energie wird uns geraubt! Die Toten strahlen, sie sind nicht ansprechend und nicht ansprechbar.」「ああ、わたしにはあなたの声がほとんど聞こえない、どうにかしてほしい。あなたの声を響かせてほしい。わたしはわたしを聞きたくない、あなたにわたしをかき消してほしい。誰も聞こうとしなかった、もう仕方ない。なにか異物が揺り籠に眠る、唸りはじめた、まるで地獄の炎、まだ小さい。今新たに生まれつつあるこの異物は取り除かねばならない。どのように海に流し、また海から引き出せばいいのだろう。入れる、出す、入れる、出す。どうすればいつかこの道を抜け出ることができるだろう。うつろな道、ここからはなにも生まれない、左右の壁は高い、険しい、滑る。わたしたちは願う、わたしたちにもよい光が投げかけられることを。だが光を、放射線を、熱を、ひとは聞くことができない。この唸り声はなに。わたしたちのエネルギーが奪われる!死者たちは光-線を放つ、彼らは話しかけない、彼らに話しかけることもできない。(林立騎・訳『光のない。』より、上記抜粋に合わせ一部改変)」
千秋楽の劇場へ向かうSバーンの中でドイツ語で芝居をやる夢は叶った一方で2年経って諦め始めている別の夢に思い至りしんなりなって通りを歩いていると金色衣装にハイヒールのドラァグクイーンがただ一人素で平然と平日の明るい午後にどういう理由でか分からんけど歩いてた姿、と、千秋楽開演直前ウォーミングアップ待ち時間に演劇グループ中ぶっちゃけ一番疎遠なベトナム系くんが僕の劇中ソロ末尾をどういう意味でか分からんけど真似してた姿、とを脳内の箱に放り込んで。