ますだいっこうのあと@ベルリン

在ベルリン/俳優・ゲイ/演劇コーヒー映画アート読書都市旅ドイツ語/ikko119[あっとまーく]gmail.com

『溺れる男』

ゆっくり起きて日が高くなってお昼時前の時間帯ひとときだけ南の建物とひさしの間から日が射すのねと窓から見上げて掃除機をかけた午前。ベルリン宿泊がらみ。新宿高島屋ブックファースト無印スターバックス

ダニエル・ベロネッセ演出『溺れる男』@にしすがも創造舎特設劇場。東京国際芸術祭の海外モノ3本セットチケット活用。どーでもよいけど元中学校の校門である入口が暗くて侘しいのはどうにかならんのかね、インターネーショナルなフェスチバーだのに。

通訳担当川口隆夫さん、舞台監督トラくんこと寅川英司くん、アイドル度再上昇(笑)、と開演前ヤアヤアヤア。場内整理にはマイボウズフレンド淳一くんの姿も。

「アルゼンチン現代劇の騎手が描く、衝撃のチェーホフ翻案」(チラシテキスト)。ハイ男女逆転で“三人兄弟”なんっス。

開場すると舞台にはすでに役者たちがユルークいて知合いらしきノンジャパ客とハグしたり雑談したり。んで客席がただ暗くなっただけの“バカ明かり”で始まる、てかずーっとそう暗転もない、ついでに音響効果もほぼない、役者舞台上いっぱなし系の芝居。演技は日常系、見間違いかもだけどプロモーションビデオに「ストリートな身体」みたいなキャプションがあって笑えた。

個人的にはさっぱりわからんスペイン語だけどアルモドバル映画なんかで耳にして、さっぱりわからんくせにカラコロカラララララてな言葉の音の響きで脳がこちょばくなる感触ってばけっこう好きで、それが目の前で生身の個性バラバラな役者たちからラフに楽に交わされるのをひたすら視るの。うんある意味極上。チェーホフ云々抜きでもおもしろがれたわ。

最後、おっさんのオーリガ兄さんとかがね全然頑張らないで言う「生きていかねば」系の名台詞、もちろん日本語字幕の扶けで理解できたんだけどね、でちょびっと目頭熱くなりましたわ。舞台上の使い古されたソファやイスなどの使い方もシンプルで素敵だったなあ。不遜ながらこういう芝居かかわってみたい。

はっ、あと気がつけばくたびれラテン系男のセクシーさにもさりげなーくヤられてたわ。

以下当日パンフより加筆。「空間はひとつ。場面転換はない。人は何かに執拗に追われ、傷つくが、その傍らで幸福への希望を紡ぎ続けるのだ。舞台に登場してくる男と女は愛し合う。殺しあう。自分の脚の間にある性が男であろうと女であろうとそれには頓着しない。音楽はない。照明の転換もない。簡略化されたテキスト。『三人姉妹』とは異なる場所の設定。新しく創りかえられた場面。登場人物は舞台をそぞろ歩く。出番でもないシーンに顔をのぞかせる。舞台を、できるだけ直接的で豊かな空間に変えようという健全な意図に基づく改変である。古典は雄雄しく屹然とそこに立ち続けている。私たちは古典を変える。新しく生まれた作品はさらに新たな出会いを繰り返す。そしてそれも、やがては昔語りの中の見知らぬ作品となっていくのだ。数年後には、『溺れる男』に対するの私の見かたも違ってくるに違いない。チェーホフは明哲なる失望感の淵から、世の中を動かしていくのはこうした考えなのだと私たちに告げているように思える。」